起業前 / 学生時代から
進学、中退、家業。その先を手帳に描く
熊谷正寿の学生時代は、学歴だけを並べても捉えにくい。本人の公式プロフィールでは、進学を目指して受験勉強へ打ち込み、望んだ高校へ合格した後、2年で退学した経緯が語られている。努力して入った場所に、そのままとどまったわけではなかった。入学という一つの目標を達成することと、その後の生活の方向を定めることは、別の問題だった。
高校を中退した後は家業を手伝う。本人のインタビューには、仕事をしながら放送大学の学びにも触れ、家庭も持った若い時期が記されている。周囲の友人が大学生活を送る間に、自分は働く生活へ入っていた。その違いは、必ずしも本人が後から誇れるような、一直線の起業準備として経験されたわけではない。
仕事に追われていると、今日を終えるための作業で一日が埋まる。だが、忙しいことと、望む方向へ進んでいることは同じではない。熊谷は、そんな状態の中で手帳へ自分の夢を書いたと振り返る。ここでの手帳は、予定を忘れないための道具にとどまらない。目の前の用事から少し離れ、自分がどこへ行きたいかを置いておく場所になった。
学校を辞めた経験を、そのまま経営の成功の理由にすることはできない。熊谷自身の物語で大きいのは、思い描いた道から外れた後にも、仕事と学びをどう組み直したかという点だ。後の経営で繰り返し現れる、目標を具体的な行動へ分ける方法は、華やかな事業の現場より前に、この若い時期の生活と結びついている。







